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今更ながらドヴォルザーク(その2)

世の中は、よく判っているごく少数の人、よく判らないことについて語るために最低限のことは勉強しようと思うこれまたごく少数の人、よく判らないことには口をつぐむ比較的少数の人、よく判らないことを情緒の問題にすりかえて「●●さん可哀そ~理●のジジイ最低~」などとしゃべりまくる比較的多数の人に分類できる。これ、音楽についても一緒やなぁ。




ドヴォルザークとの対決(笑)、まずは序曲集から。

ドヴォルザークについて語る際によく使われる「民族主義」なる言葉、この理解のためにうってつけの小論を吉松隆氏のブログに見つけました。
http://yoshim.cocolog-nifty.com/office/2007/11/post_c10a.html
この論考に触発された訳でもないけれど、まずは序曲「フス教徒」(「フス党」と呼ばれることも)から。
作品の書かれた背景については吉松氏の論考に付け加えるべきことは何もありませんが、これこそドヴォルザークの作曲家としてのアイデンティティの確立と呼ぶにもっとも相応しいものであるといえるような気がします。
初演は1883年。丁度この年ワーグナーが亡くなっています。ブラームスは交響曲第3番を初演。前年の1882年はスメタナ「わが祖国」の全曲初演。ドヴォルザークの初ヒットともいうべき「スラブ舞曲集」の初演は1878年(この年ブラームスと知りあっている)ですが、概ね彼の主要なキャリアはこの1883年に始まると言ってよいと思います。
これは大変な力作で素晴らしい作品だと思います。
全体は序奏附きの自由度の高いソナタ形式で、大規模に拡大されながらも緊密な構成となっています。

  序奏(1~80小節)
    主題Ⅰ-コラールⅠハ長調(1~27小節)
    主題Ⅱハ長調(28~56小節)
    主題Ⅰ-コラールⅠハ長調(57~80小節)
  提示部 81~240小節)
    第1主題ハ短調(81~166小節)
      コラールⅠ(121小節~)
      コラールⅡ(129小節~)
    第2主題変ホ長調(167~240小節)
  展開部(241~340小節
  再現部(341~467小節)
    第1主題ハ短調(341~388小節)
    第2主題ハ長調(389~467小節)
  コーダ(468~609小節)

ここでは468小節以降を長大なコーダとみたが、再現部とはいえ充実した展開が続くので467小節目までを展開部、468~530小節を第一主題の再現。531~554小節を圧縮された第二主題の再現、555~609小節をコーダとみることも可能だと思います。どちらが正解かはあまり意味のある議論ではないでしょうが、それほどまでに動機を執拗に展開していくのが印象的。
Lento,ma non troppoハ長調の序奏、木管群による宗教的な主題Ⅰはどこかワーグナーのタンホイザーを思わせる。この主題の後半はwikipediaによればフス教徒のコラール「汝ら神の戦士たち」Ktož jsú boží bojovníciの引用だそうだが、このコラールの元の姿はyoutubeで確認することが出来ました。
http://www.youtube.com/watch?v=elskCac9wSI
28小節目Poco animatoに転じてハ長調の流麗な主題Ⅱ。これは後にソナタの第2主題にモディファイされます。57小節で主題Ⅰが回帰、このあたりの盛り上げ方はリストの交響詩「レ・プレリュード(前奏曲)」を思わせる所があって、ドヴォルザークはこの交響詩を大いに勉強したに違いありません。
81小節Allegro con brio、ここからがソナタ形式の主部。第一主題はハ短調、この旋律は交響曲第7番に転用されています。121小節目、コラールⅠが鳴り響き、129小節から新たなコラールSvatý Václave(聖ヴァーツラフよ)からの素材が導入されます。こちらも原曲(を4声合唱に編曲したもの)をyoutubeで見つけましたのでURLを張っておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=Yja_oZjfgWM
167小節からソナタの第2主題変ホ長調、これは序奏の主題Ⅱを少しだけ変形させたもの、後半はコラールⅡの動機に繋がっています。
241小節Poco tranquilloから展開部となり、コラールⅠとコラールⅡ、第1主題の動機が展開されます。
341小節から再現部。第一主題が奏されて直ぐに第二展開部とでもいいたくなるような執拗な展開が続きます。
468小節からのコーダは第1主題から始まってすぐにコラールⅠ、Ⅱ、第2主題と続き、581小節Lento maestosoから序奏主題Ⅰがトゥッティで高らかに歌われ、灼熱のPrestoで全曲を占めます。
序奏の二つの主題、二つのコラール素材とソナタの主題が長大な展開部で展開されつくすのが聴きもの。まるで已むに已まれぬ衝動が堰を切って溢れ出る様な音楽に、ドヴォルザークの今迄私がしらなかった一面を見たような気がします。愛国的なテーマを扱いながらも、旋律の泥臭さがあまりないのも聴き易い。この展開部および再現部での執拗な展開の持続はすぐ後の世代の、マーラーの長大な交響曲の楽章に比べることも出来そうです。
この路線をもう少し続けてくれたなら私のドヴォルザーク観も随分違っていたはずだが、どうも交響曲8番の前後から渡米後にかけて皆のよく知る作風に変化したようだ。生半可な知識で決めつけてはいけないが、この作品、ワーグナーとリストの正統な後継かつマーラーの先駆としての役割を果たし得る傑作だと思います。後の良くも悪くも平明な作風とはかなり異質のこの序曲(その分、まったく人気がない)、大いに気に入りました。
(この項続く)
by nekomatalistener | 2014-04-20 16:07 | CD・DVD試聴記