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ドビュッシー「映像第二集」第二曲の邦題について

おは朝の天気予報の正木さん、私より1こ年上なのに会社の人から「正木さんって猫またさんより10こぐらい若く見えますよね~」と言われた。心外。





久しぶりに投稿します。2年ちょっと更新をサボってましたが、その間に転職したり色々あってすっかりブログを書こうという気をなくしてました。まぁぼちぼち再開します。

ちょっと人前でピアノを弾く機会があり、目下準備中。持ち時間が12~14分くらいあり、アルベニスのLavapiesをやろうと思うのだがそれだけでは7分ちょっとにしかならないのでもう一曲、真夜中から真昼へ、人気のない世界から賑やかな街の光景へ、遠い景色から目の前の近い景色へ、といったコントラストを考え、ドビュッシーの映像第二集の"Et la Lune descend sur le Temple qui fut"を選びました。この曲、一般には「そして月は廃寺に落ちる」あるいは「荒れた寺にかかる月」と訳されていますが、なんとなくススキの生い茂る木造のボロ寺しか頭に浮かびません。それに「廃寺」と聞いてもアルプスの少女しか連想できず、語感としてもしっくりきません。ドビュッシーは例えばボロブドゥールのような仏教寺院、アンコールワットみたいなヒンドゥー寺院の遺跡を念頭においていたと思われますので、もう少しマシな邦題がないものか、とピアノの先生に相談したところ、「それ考えるのも宿題ね」と言われてしまいました笑。
私はフランス語の知識はほぼゼロに等しいのですが、それでもちょっと考えてみたらこれがなかなか楽しい。
まず文頭のEt。文頭に置かれているからには、先行する詩句があるのでしょう。つまりこれは単なる説明文ではなくて、詩の一節であるという理解でいいのでしょうか。であれば「そして」は日本語として少し稚拙だし、etを訳さないのも逃げている感じ。「しかも」「然も」「しかして」「而して」・・・少し古色蒼然とした感じで尚且つ爺臭くなく、ということで「然も」を採ります。
次にdescend。月が「落ちる」「落つ」「降りる」「傾く」等々。格調高いのは「落つ」だろうけど、現在完了っぽくなるのと、どうしても爺臭くなるのでここは我慢して「落ちる」にします。「降りる」「傾く」は言葉の組み合わせの意外性では少し弱いかな。
最後に"le Temple qui fut"。フランス語の単純過去のニュアンスはよく分からないですが、「かつてそうであったところ」「今はもう姿をとどめていない」という感じでしょうか。英語だと"temple that once was"とか"temple that used to be"と訳されてます。ならば「寺跡」「寺址」と訳すのはどうか、と思いましたが今一つ日本語としてこなれていない感じ。中国語はどうか、というと、徳布西(ドビュッシー)について書かれたあるサイトでは「月落古廟」と書かれていました。「古廟」・・・これはいいかも。廃墟と化した石造寺院のイメージが浮かびます。口に出してみても「寺跡」よりは「古廟」のほうが耳に快い。
「然も月は古廟に落ちる」・・・これはなかなか笑。
ピアノ弾きの皆さん、ご自由にお使いください。
(この項終わり)

by nekomatalistener | 2020-10-06 11:04 | その他 | Comments(0)
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