<< 新国立劇場公演 細川俊夫「松風」 メシアン 「鳥のカタログ」全曲演奏会 >>

Olivier Messiaen Complete Editionを聴く(その18)

昨年の紅白も家人が観るのでなんとなく目に入るだけだったんだけど、竹原ピストルの熱い声はやっぱり耳を惹き付ける。でもツイッターで感想を見てたら「うまいラーメン作りそう」ってのが一番なるほど、と思えました。





晩年の大作「彼方の閃光」を聴いていきます。

 CD25
 彼方の閃光(1991)

 チョン・ミュンフン指揮バスチーユ歌劇場管弦楽団
 1993年10月録音


この作品、ウィキペディアを始めとして、意外とネット上の情報も多いので作曲の経緯等は割愛。以前の私であれば、「若い頃の手癖で書いてる」だのなんだのと否定的な言辞を弄したかも知れませんが、「アッシジの聖フランチェスコ」と並べて何度も録音を聴き、「アッシジ」のびわ湖ホール公演に触れて圧倒的な感銘を受けた今では、大変な傑作ではなかろうかと思うようになりました。全体的な印象をまず記すと、
・晦渋なところの少ない、平明といってよいくらいの分かりやすさ。
・巨大編成にも関わらず、透明・静謐・簡素な書法。
・仰々しいサブタイトルがなくても切実に感じられる宗教性。
こんなところでしょうか。
それにしても、このところ何度も書いているように、メシアンの音楽は生演奏を聴くとかなり印象が変わる。晦渋に思えたところがすんなりと腹に入ってくる感じ。昨年のカンブルランと読響の「彼方の閃光」のコンサート、やはり行っておくべきだったと後悔頻りです。
先ほど、「平明といってよいくらいの分かりやすさ」と書いたけれど、そうはいってもメシアン独特のイディオムによる一時間を超える大作、そうすんなりと咀嚼できるものでもありませんので一曲一曲自分の備忘のためのメモを付けておきます。サブタイトルの定着した訳語は多分ないのでウィキを参照したが、明らかな誤訳など適宜修正しました。


第1曲「栄光のキリストの出現」
金管のパルジファル風のコラール。初期の「キリストの昇天」を思い出させる美しさ、途中何度か長いゲネラルパウゼが出てくる。それは生涯の終りの万感の思いを想起させる。
第2曲「射手座」
弦のカンティレーナをチューブラーベルやゴングといった打楽器、弦のハーモニクス、フルートの鳥の歌などが彩る。ここにも時折長いパウゼが・・・。この弦の旋律、どこかで聴いたことがあると思っていたが、「嬰児イエズスに注ぐ20のまなざし」の第11曲「聖母の初聖体拝受」の中間部(マニフィカト)に入る直前、左手に現れる「聖母と御子の想起」Rappel de《la Vierge et l'Enfant》と記されている旋律である。生涯の終りにこうして若き日の作品の自己引用を行っているのは面白い。
第3曲「コトドリと結婚の街」
おどけた感じのスケルツォ。愉悦に満ちた鳥の声。
第4曲「刻印された選ばれし者」
大小のゴングの鳴り響く中、木管による錯綜したアンサンブル。わずか2分強、晦渋という訳ではないが、複雑なリズムの重ね合わせは音によるスコラ神学と言いたくなる。若い頃からこの晩年まで、こういった複雑さもまたメシアンの神髄と思わせられる。
第5曲「愛にとどまる」
まどろみのように甘い官能的な音楽は「トゥーランガリラ」の「愛の眠りの園」を連想させるけれど、何かが決定的に違う。それは音楽の純度に関わる何かだが、まだ私の中で言語化していかない。何度か長い長いゲネラルパウゼ。
第6曲「7つのトランペットと7人の天使」
様々な打楽器とトロンボーンのユニゾン。大太鼓の三回ずつの連打が非常に特徴的。最近はほとんど使われないが御稜威(みいつ)という言葉を思い浮かべる。
第7曲「そして神はすべての涙をぬぐい去り給う」
高い弦のトリル、木管の優しい響きとホルン、鳥の歌。メシアンのたどり着いた癒やしの世界。
第8曲「星々と栄光」
タムタムと低音楽器の晦冥の響きに光が差すような金管のスケルツァンドなパッセージ。闇と光の絵画的表現。この作品、大半の楽章はとてもシンプルな作りをしていて、若い頃の(たとえばトゥーランガリラのような)過剰感はない。ただこの第8曲と第10曲はたくさんの素材がさまざまな楽器の組み合わせでめまぐるしく現れる。だが巨大オーケストラをトゥッティでならす箇所は随分少ない。前後の楽章にくらべるとごてごてと複雑な構成に聞こえるが全体の中にあって違和感がない。これと次の第9曲は、私には殆ど「アッシジの聖フランチェスコ」のスピンオフ作品であるかのように思えます。
第9曲「生命の樹の鳥たち」
木管群による様々な鳥たちが鳴き交わす。
第10曲「神の道」
弦の半音階上昇と金管による神の栄光。第8曲と同様、多彩な楽想が詰め込まれているにも関わらず、全体のシンプルで静謐な印象を壊さずに収まるところに収まっているという印象を受ける。
第11曲「キリスト、楽園の光」
優しく美しい弦楽合奏で、第1曲とのシンメトリーを成しながら穏やかに全曲を終わる。
(この項続く)

by nekomatalistener | 2018-02-15 22:57 | CD・DVD試聴記 | Comments(0)
<< 新国立劇場公演 細川俊夫「松風」 メシアン 「鳥のカタログ」全曲演奏会 >>