「人喰猪、公民館襲撃す!」という2011年公開の韓国映画(もちろんC級)、なんか邦題のセンス(泣)にほだされて観たくなるなぁ。にしても公民館って・・・
ラバピエスに関してもう一つ豆知識みたいなお話を。 ロマン派以降の楽譜にはいわゆる「発想記号」というものが多く書き込まれるのが通例です。例えば、grazioso(優美に)とかrisoluto(決然と)といった類ですが、ラバピエスにはnarquoisement(人を小馬鹿にしたように)とかbrusquement(とげとげしく)、canaille(下卑た感じで)といった他では滅多にお目にかからない言葉がフランス語で書き込まれています。マドリッドの一角のラバピエス地区はいわゆるヒターノが多く住む街。昔から泥棒の巣窟などと言われて治安の悪い場所だそうだが、陽気な音楽に附せられたこの手の標記になにがしかの影響を与えているのだろうか。いずれにしても、きれいに、耳に心地よく弾くだけでは決定的に何かが足りないということ。前の投稿で私が「猥雑」ということばを繰り返し用いたのはこういうところを指しています。ラバピエスを弾く面白さは、この猥雑さ、下品さと言っても良いと思いますが、これを音楽的に表出することだろうと思います。 では前回の続きです。 http://www.youtube.com/watch?v=5EDzZ4uQsTI マルカンドレ・アムラン キャプションはなく詳細不明。アムランという人、いわゆる超絶技巧系の作品でいくつか良いディスクもある(例えばゴドフスキー=ショパンのエチュードとか)が、クラシカルな演目で実に退屈な演奏もあるというイメージ。この動画は録音も劣悪で終盤に音が流れなくなる事故があったり評価に値しないが、この曲とアムランの相性が悪いことは判ります。技術的にも破綻がおおく雑。 ★ http://www.youtube.com/watch?v=omY4PCYOP8o アムランの東京でのリサイタル? この曲がこれほど何の感興もなく弾き散らされることも珍しかろう。なにしろ聴いていて全く楽しくない。技巧的にも実にお粗末。アムランの志すエンタテイメントとイベリアのそれとは方向性が違うのだろう。 ★ http://www.youtube.com/watch?v=kUyw3MLzhZU Rosa Torres Padro 英語のキャプションがないので詳細不明。テンポの揺れに独特のものがあるが、やや恣意的に感じられたり、 極端な音の跳躍といった技巧上の困難を回避するための、必然性のないテンポの揺れに思われるところもあって、あまり感心しない。 ★★ http://www.youtube.com/watch?v=fEYu8qvj_OU Diego Cayuelas 個人的には大変好きな演奏。技巧的には完璧といっても良いが、あまり神経質にならずに曲の猥雑な持ち味を全面に出しているのが素晴らしいと思う。密集和音や対位法的なからみの表現も程良くノンシャランで、何より聴いて楽しいと思う。この人については良く知りませんが、全曲録音していたらラローチャに迫るものが出来たに違いない。 ★★★★ http://www.youtube.com/watch?v=EhjNQnyl7XA Vanessa Perez International Keyboard Institute & Festivalとキャプションにある。よく考えられ練り上げられたと感じられる点も多いが、魅力にまで至らないという感じ。やはり技巧的な面での余裕のなさなのだろうか。 ★★ http://www.youtube.com/watch?v=uCdM4wpe9TM Jose Echaniz 全曲盤、ラバピエスは45:14から。1950年代のウェストミンスター盤の録音とのこと。ヴィンテージ録音としてそれなりに貴重だとは思うが、技巧的にはかなり難あり。これを聴くと改めてラローチャという人がどれだけ傑出していたかを思い知ることになる。 ★ http://www.youtube.com/watch?v=N_IETC4Opc0 Jose Maria Pinzolas 1991年録音の全曲盤。ラバピエスは59:30から。うーん、平凡かな。どこがどう悪い訳ではないんだが面白くない。これくらいならいまどきアマチュアでも弾きます。 ★★ http://www.youtube.com/watch?v=R13GcRQSPxU Rafael Orozco これも全曲盤でラバピエスは57:45から。このピアニストについても詳細は何も知りませんがなかなか悪くない。さきのCayuelasとよく似たアプローチで、それなりに技巧もしっかりしていて手の内に入っている感じがします。これでもう少し華があれば、と思います。 ★★★ http://www.youtube.com/watch?v=Gi0n6ZYeaUM Mauricio Annunziata 1989年ブエノスアイレスとのキャプション。珍無類という人もいるかもしれませんが、基本的に弾けてないので私はパス。 ★ http://www.youtube.com/watch?v=q53THCBxIOs Pedro Fermín Guardia キャプションには"Murcia, 13-05-2013"とある。ライブという以前に、体育会系というか、かなり荒っぽいところがあるが、陽気で猥雑という本来の曲想にはそれなりに合っていると思います。少なくとも聴いて嫌な感じはしない。 ★★ http://www.youtube.com/watch?v=l9PjbrV-Dn4 上原由記音 アルベニスを得意といている人だそうだが、これを聴く限り、指のよく回るお嬢さんがきれいに無難に弾きました、という以上の感興を持てないのでした。このyoutubeはなぜか前半しか収録されていません。 ★★ 他にもいろいろありそうですがもうお腹いっぱい。どちらかといえばマニア向けの曲かと思ってましたが、録音・動画とりまぜてこんなにあるとは思いもしませんでした。それにしても難しい曲だなと思います。技巧的な困難もさることながら、それを乗り越えて陽気に猥雑に弾くのがなにより大変。★3つ以上はそれなりに聴いて楽しく、こんな風に弾いてみたいと思わせてくれる演奏でした。 最後におまけでアルベニス「スペイン組曲」から「カディス」をアルド・チッコリーニが弾いている動画を。 こういうのを色気のある演奏というのだろう。この小股の切れあがった女に鯔背な男、という感じ、若い人に理解してもらえるだろうか。 http://www.youtube.com/watch?v=Mj2vuUyPLzY (この項終り)
by nekomatalistener
| 2014-04-04 23:48
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