外国語使い過ぎで精神的苦痛、71歳老人NHK提訴って・・・。裁判所もアレだな、「ちょ・・・おま・・・さすがにそれイミフだわ」とかなんとか言って蹴ったら面白かったのに。
新国立劇場で委嘱新作のお披露目公演に行って参りました。 2013年6月26日 白雪: 腰越 満美 百合: 砂川 涼子 晃: 西村 悟 学円: 宮本 益光 鉱蔵: 妻屋 秀和 鯉七: 羽山晃生 弥太兵衛/蟹五郎: 大久保 光哉 鯰入: 志村 文彦 万年姥: 森山 京子 与十/初男: 加茂下 稔 合唱: 新国立劇場合唱団 合唱指揮: 三澤 洋史 児童合唱: 世田谷ジュニア合唱団 指揮: 十束 尚宏 演出; 岩田 達宗 管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団 新国立からの帰り、電車の中でエアウィーヴ社の広告(マットレスの会社ですね)を見かけましたが、そこには浅田真央と坂東玉三郎のお二人の写真が・・・。そういえば玉三郎はその昔、映画「夜叉ヶ池」で百合と白雪姫の二役を演じていたなぁと思い出しました。これも何かの因縁ですかね? それは兎も角、今回のオペラ版夜叉ヶ池、大変面白うございました。平日の夜の公演ですが、中劇場の一階はほぼ満席だったのではないでしょうか。例によって客層はオジ・オバ~後期高齢者が9割といったところだが、偶々私の隣に座ったお嬢さんは、第2幕の鯉・蟹・鯰の三重唱でくすくす笑って、幕が下りるとお友達と「おもしろ~い」とお話になっておられました。こちらまで嬉しくなります。昨年の「沈黙」もそうですが、邦人の現代モノとなると、我々聴衆も何となく作曲者やスタッフたちを微力ながら支援しているみたいな気がして、あんまり麗しくも無いパトロン気取りなのかも知れませんが、まぁ悪い気は致しません。 作曲者の香月修氏についてはほぼ全く予備知識なしで聴きましたが、水がテーマだからという訳でもないでしょうが全体にラヴェル風の抒情的な音楽でした。ただ、聴き終えて思ったのは、第1幕がドラマとしても音楽としても少し弱いと感じられること。逆に第2幕はドラマとしても良く出来ているし、音楽的にも非常に聴きごたえがあります。この前後のアンバランスの理由について少し考えてみたい。 まず泉鏡花の原作ですが、構成としては、①百合、晃、学円の対話→②水底の物の怪たちの滑稽な場→③同じく水底の主である白雪姫と眷属らの場→④雨乞いの犠牲を迫る村人と百合達の対決→⑤カタストロフ、という順で物語が展開します。①の部分は原作では全体のほぼ半分を占め、科白主体の対話劇だが、オペラの素材としてはやや平板に過ぎるというもの。対して②~⑤の部分は見た目にも面白く、物語も一気に動き出す感があります。まずは一夜の興行に相応しくほぼ同じ長さのニ幕もの、という構想が先にあったのでしょうが、そうなるとドラマトゥルギーとして②~⑤を前後に分けるというのはあり得ないだろうから、必然的に①の素材を第1幕に宛がうことになります。ところがこの①はオペラ向きの素材とは言い難い。必定、①の科白を大幅に削り、③あるいは④の要素を第1幕にも散りばめ、更には原作にない子役達の場を創造したという訳なのでしょう。しかしそれでも第1幕は些か長過ぎると思われ、しかも①以外の要素がどれもこれも水増ししたようにしか思えない結果となっていました。先に原作を読んでしまっているからそう感じるのかも知れませんが、鏡花の原作の構成はシンプルながらよく出来ていて、下手に弄れば弄るほど冗漫になってしまうように思います。作曲者としては一音符たりとも削れないところでしょうが、もし第1幕がもう少し短ければ、あるいは長めの一幕仕立てであったなら、はたまた前半が対話劇としての面白さを追求するような音楽的スタイルであったなら、もっと引きしまった音楽になったような気がします。不遜な物言いを許してもらえるならば、この作品は改訂版を作るだけの値打はあると思います。 次に、物語を離れて音楽的な要素についてですが、作曲者に拠れば、新国立劇場の尾高監督から「口ずさめるような親しみ易い歌のあるオペラを創りたい」と言われて本作を書いたとのこと。確かに第1幕の音楽は良くも悪くも平易で親しみ易いものでした。そのこと自体は少しも悪いこととは思いませんが、第2幕で最も感動を誘う場面、すなわち百合の自害の場であるとか、白雪の狂乱の場など、どう考えても「口ずさめるような」音楽でもなければ「親しみ易い」音楽でもない。このあたりが現代におけるオペラの在り方の難しさなのでしょう。要は第1幕に比べて、後半第2幕の方が親しみ易い音楽とそうでない音楽のバランスが良かった、ということなのでしょう。ちなみに百合の自害の場は、原作ではごく短い科白しか与えられていないので、かなりの補筆があったようだが、概ね流れを壊さない優れた台詞だったように思います。音楽としても大変良いものでした。また、白雪の科白の中でも最も美しいところ、(白雪)「思いせまって、つい忘れた。・・・・私がこの村を沈めたら、美しい人の生命もあるまい。鐘を撞けば仇だけれども、この家の二人は、嫉ましいが、羨しい。姥、おとなしゅうして、あやかろうな。」(姥)(はらはらと落涙して)「お嬉しゅう存じまする。」の部分の音楽は胸に迫るものでした。 新作初演につき、個々の歌手の巧拙を論っても仕方がないという気もしますが、それにしても砂川涼子の百合は素晴らしかったと思います。前半の楚々とした歌い方もさることながら、自害を前にして、結った髪をほどいて「もう沢山でございます」と歌い始める場面の凄まじいばかりの強さに圧倒されました。ついこの間、魔笛のパミーナを聴いたばかりですが、今回の百合は本当に聴けてよかったと思いました。また、その他の歌手、管弦楽、いずれも不満のない出来栄えであったように思います。 演出については、回り舞台で晃と百合の住む茅屋の辺り、白雪が御座す夜叉ヶ池の水底、村人の集まる人里の石段、最後に鐘楼の沈む淵を次々と見せて秀逸でした。魚や物の怪など白雪の眷族の踊りは、ちょっと野暮ったい感じがするのと、その所作が少し煩いようにも思いましたが、概ね音楽を邪魔するほどではありませんでした。 歌詞が聴き取り易く書かれているとはいえ、基本は大正初期の言葉、歌詞が字幕で流れるのは結構なことです。これがなければ完全に歌詞を聴きとることは困難でしょう。 さて、2012~2013年のシーズンも本作で終了。10月のリゴレットまでしばらくオペラもお預けです。今シーズン最も感銘を受けた公演はなにか。私には何と言っても「ピーター・グライムズ」でした。次いで「ナブッコ」。歌手とオーケストラと演出の全てに満足出来たものといえば以上の2作が他を圧倒していました。来シーズンを楽しみに、しばらくCDなどで未知の作品を聴いたりなど充電します。 (この項終わり)
by nekomatalistener
| 2013-06-28 00:03
| 演奏会レビュー
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