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新国立劇場公演 プッチーニ 「トスカ」

パワハラはヤだけどネコハラだったらされてみたい(仕事中なのにキーボードの上に座られる、とか)。





「ライマン」のメデアを観てから家に戻って、興奮冷めやらぬままに感想をブログに書いたら、もう右脳も左脳も完全燃焼してさすがにぐったり。翌日の「トスカ」のチケットを取っていたことを少し後悔してました。仕事のことを考えるとこの日しかなかったのですが、一瞬行くの止めようか、と思ったほど。でも行ってよかった。とても良い舞台でした(でも今日の投稿はちょっと短め)。

  2012年11月11日

  プッチーニ 「トスカ」
   トスカ: ノルマ・ファンティーニ
   カヴァラドッシ: サイモン・オニール
   スカルピア: センヒョン・コー
   アンジェロッティ: 谷友博
   スポレッタ: 松浦健
   堂守: 志村文彦
   指揮:沼尻竜典
   演出: アントネッロ・マダウ=ディアツ
   管弦楽; 東京フィルハーモニー交響楽団

「トスカ」という作品、改めて傑作であると思いました。普段そんなにしょっちゅう聴きたいと思わない曲で、以前にも先輩の方に「プッチーニは何が好き?」と聞かれて散々迷った末に「ジャンニ・スキッキかトゥーランドット」と答えたことがありましたが、まぁ「トスカ」という回答は思い浮かびませんでした。しかし、こうして舞台で観ると実に完成度の高い作品です。各幕に極めつきのアリアがそれぞれ配され、そのいずれも見事な泣かせっぷり。いいじゃないですか、たまにはプッチーニで泣くのも(笑)。
主役3人のうち、本日のMVPはカヴァラドッシを歌ったサイモン・オニール。文字通りスピントな声で、音域が上がれば上がるほど輝かしさを増していく強靭な声。しかも脳天気なテノールではなくて知性を感じさせる歌い方です。低音域にやや精彩を欠くか、とも思いましたが瑕というほどのことでもない。何となく世界的にテノール不作の印象があったが、まだまだ素晴らしい歌手は沢山いるのですね。
トスカのノルマ・ファンティーニもなかなか良い歌手です。音域の高い強音になると若干音程が怪しくなるところがありますが、基本的には透明感のある美しい声。第2幕の「歌に生き恋に生き」には思う存分泣かせて頂きました。このプッチーニの泣かせるメチエ(またか、と言われそうですが)、今は書く気力がないですが、近いうちにもう一度、以前「外套」のジョルジェッタとルイージの二重唱で試みたような分析をしてみたいと思っています。トスカの3つの有名なアリアは、それぞれ物語の進展に応じて実に面白い構造を秘めているとだけ申し上げておきましょう。
スカルピアのセンヒョン・コーも悪くはないですが、なんというか、もっと突き抜けた悪の輝かしさみたいなものが欲しいと思いました。同じ悪役でも「オテロ」のイヤーゴのような陰影はそもそも持ち合わせていないストレートな悪役ですから、そのぶん声そのものの威力が要求され、ある意味イヤーゴよりも歌手にとっては難しい役かもしれない、と聴きながら思いました。手が届きそうで届かないようなもどかしさを感じます。
脇役は、アンジェロッティの谷友博は可もなく不可もなし。堂守の志村文彦とスポレッタの松浦健は大健闘。とくに後者は卑屈で小ずるい小心者、という役どころを見事に歌い演じていたと思います。
指揮は何といって変わったことはしていないのが大変結構(3階だか4階だかの席から派手なブーイングが出たのにはびっくりしましたが)。もう一歩踏み込んでタメを作って、なおかつ臭くならない、というのが理想的なのでしょうが・・・。オーケストラも、あとほんの少し音圧のようなものがあれば、と、これは私のないものねだり。
2000年の製作の舞台の再演ですが、正攻法でそれなりに金の掛った装置なのでしょう。新国立劇場の奥行きを活かしてそこそこの豪華さもあり安心感はあるが、思わずため息が出る、というほどではない。まぁこのお値段でゼッフィレッリの舞台みたいなゴージャスなものを望むのは間違っている、というのは十分判っております。
by nekomatalistener | 2012-11-11 23:44 | 演奏会レビュー | Comments(5)
Commented by schumania at 2012-11-17 21:55 x
レポートをありがとうございます。今週の金曜日に行きますので、良い予習になりました。もっとも、「もう一歩踏み込んでタメを作って、なおかつ臭くならない、というのが理想的なのでしょうが・・・。」というコメントがちょと気になりますが・・、正にそういう演奏が好みなので・・。
「トスカ」、プッチーニ大好きな私でも、最も好きなオペラには挙がらないのですが、それでもやはり、2幕はプッチーニ全作品中の白眉であろうと思います。金曜日を楽しみにしております(土曜日の自分の演奏が気がかりで上の空にならなければ良いのですが・・)。
Commented by nekomatalistener at 2012-11-19 07:05
家のパソコンが動かなくなって返事が遅くなりました(今会社から打ってますw)。ホントに第2幕、素晴らしいですね。お話はむちゃくちゃだと思うけど・・・。
Commented by schumania at 2012-11-25 19:26 x
トスカ、楽日に行って参りました。席は4階の最前列やや左寄り。第一幕、スカルピアが登場から凄い存在感で、一幕最後のテ・デウムは大変に素晴らしく、トスカも良かったので、これは第二幕は凄いことになりそうだと大きく期待を膨らませました。しかし、二幕に入るとスカルピアが失速してちょっと期待はずれ。一方、カヴァラドッシは調子を上げ、トスカと共に、天井桟敷までびんびんと気持ちよく響き渡る美声をたっぷり堪能させていただきました。
Commented by schumania at 2012-11-25 19:26 x
ただし、音楽の作りはちょっと物足りなく猫又さんの御指摘のとおり。音楽が良く整理されてスムースに進んでいくのですが、個人的には臭くたって構わないから、もっとタメを作ってコブシの効いたプッチーニ節を堪能したかったです。沼尻さんは、一昨年にびわ湖で聴いた時にはとても良いと思いましたが、プッチーニには向いてないのかも、以前に小澤のマノンやバタフライを聴いた時と同じようなもどかしさを感じました。調べてみると、沼尻さんは小澤さんのお弟子さんのようですね。因みに、沼尻さんは、娘のピアノの先生と桐朋高校の同期で、ピアノが抜群に上手くソルフェージュ能力もずば抜けていたそうです。ピアニストになるのかと思っていたらいつの間にか指揮者としてデビューしていたとか・・。

しかし、3人のソリストは十分に素晴らしく、最近では中々お目にかかれないオーソドックスな舞台演出と併せ、とても楽しめた公演でした。で、毎度、抱く感想は東京在住は人はいいな! と。リタイアしたら、新国に通いやすいところに転居するのも良いかな・・。
Commented by nekomatalistener at 2012-11-25 22:56
そうか、あのタメの無さというのは小澤ゆずりなんですね、納得するものがあります。カヴァラドッシの歌手は、私が行った日は最初からエンジン全開で、私は第1幕の「妙なる調和」からもう涙腺が壊れかけてました。まぁ普段のレベルではなかなか全ての主役陣が完璧、という訳には行きませんが、これだけ聴ければ充分ではないでしょうか。少なくとも私は何万円もする世界有名どころの来日公演は最近すっかり行く気をなくしてしまいました。
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