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日本IBM管弦楽団第18回定期演奏会

基本的にブラームスの第4交響曲を「ブラよん」とか略して言うのはあまり好きじゃないのだが、タコテンはOK(ショスタコーヴィチの10番です念の為)。タコハチも語呂がいいし、タコキューも美味しそう。




日曜日は日本IBM管弦楽団の定期演奏会に行ってきました。

 2011年11月27日 新宿文化センター大ホール
 R.シュトラウス 歌劇「ばらの騎士」から ワルツ(1944年編曲版)
 R.シュトラウス 4つの最後の歌
 ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」
 指揮:新通英洋 ソプラノ:松田昌恵

私はこれまで、いわゆるアマチュア・オーケストラの演奏会を聴く機会もけっこうありました。技術的にはピンキリであっても、楽団員の音楽作品に対する愛や思い入れが強く感じられる演奏である場合が多く、いつも大いに楽しませてもらってます。しかしながら、アマチュアの演奏をブログの上で「論評」するというのは、上手下手といった評価とどうしても切り離すことが出来ないと思い、出来ることなら当ブログでは取り上げない方針でおりました。でも、このIBM管弦楽団に関して言えば、エキストラが多いという点を除いてもアマチュア楽団の中では群を抜いて上手いオーケストラだと思いますし、今回の演奏は本当に素晴らしいものでしたので、こうして取り上げてみようと思った次第。それと、楽団員のMさんに出来れば当ブログを宣伝して頂いて、読者数をアップしようという下心も・・・(笑)。
それにしても一つの私企業でこれほどのオーケストラを抱えているというのは稀有の例ではないでしょうか。さすがにダイバーシティをもって鳴るIBMならでは。ダイバーシティと言えば女子社員に「お茶汲み」以上の仕事をさせること、ぐらいに思っている凡百の会社とはえらい違いですが、昔から性別国籍思想信条セクシュアル・オリエンテーションまで、あらゆるマイノリティに対して受容政策を取ってきた会社であればこそ、これほどの多様な人材が自然と集まるのかな、と思いました。なかなか他の企業に出来ることではありません。

これほどのオーケストラですから、更にレベルアップしてもらいたいと思い、ちょっとだけ無い物ねだりをしてみます。まずは最初の「ばらの騎士」のワルツ。なんというか、ワルツというより「3拍子の音楽」という感じです。序奏のあとの元帥夫人とオクタヴィアンの後朝(きぬぎぬ)のワルツは、Walzertempoとは書いてあっても実質は典雅なメヌエットだと思うのでこんな感じかなぁと思いましたが、続くマリアンデルのワルツとオックス男爵のワルツを聴くと、つくづくこの国ではワルツというものが暗黙知のレベルでは理解されていない、楽団員の血や肉となっていないことが如実に判ってしまいます。指揮者はなんとかワルツのリズムを楽団員にやらせようとしていることは判りますが。理想的なワルツの演奏を、羽二重餅を指揮者が思いのままに手の中で転がすようなものだとすれば、これはまるで床に落ちて固く冷めてしまった餅を指揮者が無理やり引き剥がそうと格闘してるみたいでした。楽団員が指揮者の指示する微妙なアゴーギクを全く理解していないように見受けます。オックス男爵のワルツの終わり方にDie Auftakte in den Streichern stets in dem süßlichen Wiener glissando(弦のアウフタクトは甘いウィーン風のグリッサンドで)と書かずにはいられなかった作曲者の意図とは相当距離があるように思いました。オペラを聴かずしてシュトラウスの理解はあり得ないと思いますが、大半のメンバーは多分交響詩は聴いても「ばらの騎士」はお聴きになっていないのでしょうね。でも、この複雑なスコアをとにもかくにもそれらしく聴かせてくれたのは、アマチュアでは中々考えられないことですからね。「無い物ねだり」という所以です。
「4つの最後の歌」はとても良かったと思います。一曲目で、松田さん(この方二期会の方のようですが)がちょっとオペラ風に歌ってしまったのは違和感がありましたが、だんだんと良くなりました。思うに、この新宿文化センターの大ホール、楽器はともかく声があまり響かないホールで、その響きの悪さに手こずって最初こういう歌い方になったのかと想像します。まぁ今までLPやCDで、シュヴァルツコップやらヤノヴィッツやらノーマンやらの名唱を聴いてきて、ちょっと点が辛くなるのは聴き手のこちらにも問題あり、ですが・・・。オーケストラの方は、「ばらの騎士」よりは余程こなれているように見受けました。編成としてはほぼ3管だと思いますが、弦と管のバランスが良いのもアマチュアとは思えません。弦5部の人数は12-10-10-9-7、シュトラウスとしては多いとは言えませんので、管に負けないということは大変なことだと思いました。
休憩後の「田園」、これも良かったですよ。こちらはワルツと違って、団員にも馴染みがあるでしょうし、新通さんの指揮が過不足なく的確で、楽団員が本当に楽しんで弾いているのが聴き手にもよく伝わってきました。特に第5楽章のどこだったか、音楽が自発的に良く流れているところでは細かい指示をやめて、左手でゆっくりと大きなアーチを描いてらしたのが印象的です。こういう指揮で演奏が音楽的に流れるということは素晴らしいことです。本当に良い指揮者の指導を得られて幸せなオーケストラだと思います。
この田園の第4楽章でちょっとしたハプニングがありました。ティンパニのトレモロの途中でマレットが一瞬手を離れ、高く宙を舞いましたが、ティンパニ君ナイスキャッチ、すぐにまたトレモロを叩き続けてました。これ何か新しいパフォーマンス?いいえ事故ですね(笑)。
今回の演奏会、新宿文化センターの大ホールがほぼ9割以上の入りで何よりでした。大部分が楽団員のお身内の方と拝察しました。こういった場合、マナーを云々しても仕方ないのですが、「4つの最後の歌」のよりによって4曲目で、左後方から何かビニールの袋をごそごそするような音が数分に亘って聞こえてきて閉口しました。わざわざ4曲目でなくても、と思いますが、それまで我慢してきて4曲目で退屈しちゃったんだね(苦笑)。それと田園の第5楽章に入るなり鉛筆でシャカシャカとアンケートを書き始めた隣のおっさん。お子さんの晴れ姿を見に来たお父さんかも知れん、と思うと文句も言えません。あのアンケートってのも考えもんですね。
まぁそれはそれとして、Mさん本当にありがとう。次回も楽しみにしてますのでご案内くださいね。
by nekomatalistener | 2011-11-28 00:41 | 演奏会レビュー
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