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ヴェルディ 「イル・トロヴァトーレ」 カラヤン(その4)

全然飼い主の言うことを聞かない犬の名前がロデム(しかも雑種)。



音楽を聴いて受ける様々な感情を言語化するのは本当に難しいですね。私の駄文を読んで、それでもトロヴァトーレを観たい、聴きたいと思って下さる人が一人でもいたら、もう4回目となるこの項を書き続ける目的の大部分は達成されているようなもんですが、猫またぎなリスナーとしては、まだまだこの魚には身が残っているような気がするのでもうちょっと続けます。

番号付きオペラという概念があります。時代時代で定義は異なりますが、いわゆるベルカント・オペラの場合、Scena-Cavatina-Scena-Cabaletta を基本形とする一区切りの楽曲を一曲として数え、全体が2曲目、3曲目と連なっていくものです。中にはカバレッタがなくカヴァティーナのみでナンバーを構成するもの(Romanza)、三部形式や二部形式による独立した合唱、あるいは各幕のフィナーレとなるナンバーでは少し自由度がアップして、ソロや様々な組合せのアンサンブルが幾つも続く場合もあります。前回舌足らずなまま、トロヴァトーレを構成する形式とその解体について書きましたが、その前提として全曲の構成がどうなっているのか見てみます。但し、スコアを見ながら、という訳ではないので、多少リブレットや楽譜の指定とはずれているかも知れませんが。

第1部
 第1曲 フェルランドと従者達の合唱による導入
  基本形。カバレッタの部分は簡潔極まりないですがいきなりメーター振り切れそうな盛り上がりを見せます。
 第2曲 レオノーラのアリア
  基本形。完璧なプロポーションの大アリア。
第3曲 伯爵・マンリーコ・レオノーラの三重唱
  基本形。第1シェーナは伯爵のソロ。カヴァティーナの部分に「トゥルバドゥールの歌」が嵌め込まれています。

第2部
 第4曲 ジプシーの合唱とアズチェーナの歌
  不均衡な三部形式。アズチェーナの歌の後に短いシェーナ、合唱の繰り返しは短縮されています。
 第5曲 アズチェーナのロマンツァ
  基本的にはロマンツァ形式と思いますが、後半は短縮されたカバレッタとも、劇的シェーナとも言える部分に繋がっています。
 第6曲 アズチェーナとマンリーコの二重唱
  基本形。
 第7曲 伯爵・フェルランド・従者達のアンサンブル
  基本形。
 第8曲 フィナーレ(レオノーラ・伯爵・マンリーコ・その他)
  尼僧の合唱の後に前曲のコーダが繰り返されるので、これを第7曲の結尾と見ることも出来そうですが、attaccaでそのままレオノーラのシェーナに続く為、これを拡大されたシェーナと見做しておきます。カバレッタは壮大なコンチェルタートの様相を帯びています。

第3部
 第9曲 兵士の合唱
  短い導入合唱とシェーナに単純な二部形式の合唱が続きます。
 第10曲 伯爵・アズチェーナ・フェルランドらのアンサンブル
  基本形。
 第11曲 マンリーコのアリア
  基本形。カバレッタの後半は兵士達も参加して白熱のストレッタとなります。

第4部
 第12曲 レオノーラのアリア 
  基本形。第2シェーナは修道僧の合唱と幽閉されたマンリーコの歌が入って拡大されています。
 第13曲 伯爵とレオノーラの二重唱
  基本形ですが、カヴァティーナの代わりに切迫したテンポの二重唱が置かれているのでカバレッタが二つあるように聞こえます。
 第14曲 フィナーレ
  様々な組み合わせのアンサンブルをシェーナで繋いでいく形式で書かれています。

カヴァティーナ・カバレッタ形式による独唱のための楽曲(他の登場人物は原則シェーナでしか歌わない)を狭義のアリアと呼ぶなら、実はこのオペラには3曲しかないのですね(No2レオノーラ、No11マンリーコ、No12レオノーラ)。なんとなく、次から次へとアリアを繋げて行く歌合戦という獏としたイメージを抱きがちな作品ですが、大半は種々の組合せのアンサンブルで構成されています。
私はこういう分析ごっこ(スコアを見ていないので、あくまで「ごっこ」です)は結構大切だと思っています。なぜなら、よく言われるような通説俗説(たとえば、ヴェルディは本来このオペラをアズチェーナと名付けようと思っていたが、なるほどレオノーラの占める位置は相対的に低い、とか)に対して疑問を持ち、判断を保留することが出来るからです。また、前作リゴレットでこの因習的な番号付きオペラの世界をせっかく脱却したのに、次のトロヴァトーレで再び保守的な世界に後退したとよく言われますが、それがどの程度正しいのか、一度は分析しないと直感だけでは判らないものです。
前回も書いたように、私はカラヤンの各幕、各部分の燃焼度の微妙な違いと、各ナンバーの様式の純正度あるいは解体の度合に関連を見たいと思っています。実のところ、矢張り相関がありそうだ、というぐらいで確信には至りません。また、どれだけ精緻に考察しても所詮印象批評の域を出ないような気もしています。
(この項続く)
by nekomatalistener | 2011-09-15 22:22 | CD・DVD試聴記 | Comments(0)
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