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メシアン 「ハラウィ」を聴く

ことしの花粉症は楽だったが、ひょっとして加齢による知覚鈍化ではないかという気もする。





メシアン「ハラウィ」の全曲公演という、カフェ・モンタージュならではの一夜。


 2016年4月16日@カフェ・モンタージュ
 メシアン 歌曲集「ハラウィ ~愛と死の歌」 全曲
 (アンコール)
 メシアン 「3つの歌」より 第2曲「ほほえみ」
 林千恵子(Ms) 稲垣聡(Pf)


林千恵子という方、プロフィールを調べてみると桐朋学園大学音楽学部を卒業の後、84年からパリに留学とあるので年代的には私とほぼ同世代の方のようです。メシアンの他にジョルジュ・アペルギスやリュック・フェラーリなどの現代音楽を得意とする、との記述も。
「ハラウィ」に関しても随分昔からレパートリーとしていて、何度も歌ってきたようです。だが、当日の歌唱は残念ながら瑕の多いもので、高い音の音程が定まらなかったり声がかすれたり、かなり聴いていて辛いものでした。またもう少し声質に透明感があれば、という思いもあります。
もともと「ハラウィ」自体、メゾが歌うには音域が広すぎ、技術的にも過酷な要素を含んでいると思いますが、比較的低い音域ではそれなりの様式感が感じられ、長年歌い込んできただけのものはあると思いました。たとえば第4曲「ドゥンドゥ・チル」や第11曲「星のカチカチ」の呪術的な禍々しさ等。できれば10年ほど早く聴きたかったというのが正直な感想。
ピアノパートは「嬰児イエズスに注ぐ二十のまなざし」のレトリックにとても近いものがあり、かなりの技巧が求められます。稲垣聡の演奏は何ヶ所か右手が泳ぐ事故があったけれど、落ちずに一時間弾き切っただけでも賞賛モノといってよいのかも知れません。この方、コンテンポラリー音楽に興味がある人にはアンサンブル・ノマドのピアニストと言ったほうが通りがよいと思いますが、硬質で濁りの無い強音には聴くべきものが多いと感じました。ただ歌手との音量のバランスなどはもう少し改善の余地はありそうです。
アンコールは「3つの歌」の中でも最も短い第2曲。フランス歌曲の良き伝統を受け継いで、一瞬のうちに余韻を残して消えるのがなんとも粋(個人的にはドビュッシー風に始まって終盤にめくるめくようなメシアン独自の和音が出てくる第1曲のほうが好きだが)。演奏は本編のあとでいい具合に力が抜けて良かったと思います。
(この項終り)
by nekomatalistener | 2016-04-18 23:02 | 演奏会レビュー | Comments(0)
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