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Olivier Messiaen Complete Editionを聴く(その1)

画竜点睛ってついさっきまで画竜点「晴」だと思ってた。




来る4月16日、京都のカフェ・モンタージュでメシアンの「ハラウィ」全曲という画期的なリサイタルがあります。昔LP時代に「ミのための詩」「天と地の歌」とともに何度か聴いたままその後聴く機会がなく、LPも手放してしまいました。誰の演奏だったかも覚えていません。改めて予習しようとamazonを探索しておりましたが、ちょっと血迷ってCD32枚組のComplete Editionを購入。これから少しずつ聴いて感想を書いていきます。ただ以前にストラヴィンスキーで同様の企画をたてた際は、3大パレエ以外は極端に知名度が落ちる現実、というよりも、3大バレエ以外の作品に対する根拠のない軽視や駄作扱いに強い憤りを感じていて、自ずから気合の入った記述になりましたが、メシアンはピアノ・室内楽・オーケストラ作品、そこそこバランスよく世に知られている部類(最近まで生きていた人としては例外的なほど)だと思うので、あまり気張らず、できるだけ簡素に、感想の備忘というスタンスでいくつもり。

 CD29
 ①ハラウィ(愛と死の歌)(1945)
 ②3つの歌(1930)
 ③数の死(1930)

 ①奈良ゆみ(Sp)、ジェイ・ゴットリートJay Gottlied(pf)
  1989年7月録音
 ②シルヴィア・マクネアーSylvia McNair(Sp)、ロジャー・ヴィグノールズRoger Vignoles(pf)
  1996年6月録音
 ③フランソワーズ・ポレFrançoise Pollet(Sp)、エルヴェ・ラミHervé Lamy (T)
  アニェス・シュラム・ビアロブロダAgnès Sulem-Bialobroda(vn)
  イヴォンヌ・ロリオYvonne Loriod(pf)
  1999年1月3~4日録音


さてCD29枚目に収録されている「ハラウィ」。12曲からなる連作歌曲集で「トゥーランガリラ交響曲」「5つのルシャン」とともに「トリスタン三部作」を成す。陶酔を誘うような美しさ。移調の限られた旋法、非可逆リズム、鳥の歌、ここには、43年の「アーメンの幻影」や44年の「嬰児イエズスに注ぐ二十のまなざし」とほぼ同様のイディオムが使われていて、聴いているとやや金太郎飴のような感じがしなくもないが、その多様性と強烈な個性にはやはり感心せざるを得ない。ピアノのパートは相当の技巧がなければ弾けないと思うが、密かな囁きから野蛮な叫びまで多彩な書法で書かれたソプラノパートもこれは大変だろうなと思います。終曲の凍りついたような静謐なピアノの響きは、モートン・フェルドマンの先駆といってよいと思います。

併録されている「三つの歌」、1929年の作曲当時、メシアンはまだパリ・コンセルヴァトワールでポール・デュカの生徒であったのだが、ドビュッシー風の旋律を彩るピアノの和声は既に紛う方なきメシアンの響きになっています。この頃から92年の没年までの60年強、何を聴いても「あ、メシアン」と判る音楽を書き続けたというのは、考えると凄いことだと思います。
同じく29年に作曲された「数の死」、ドビュッシー風の旋律は時に凡庸といってもよいくらいなのに、メシアン独特の和声が彩るとそれなりの佳品に感じてしまうところが実に面白い。演奏時間12分ほどのバラード風の歌曲というのは、シューベルトが少年時代に書いた長大なバラード(例えばシラーによるD77など)の遥かなこだまという感じもします。

演奏はいずれも大変結構。「ハラウィ」を歌う奈良ゆみは、パリで直々にメシアンの薫陶を受け、日本でも何度かこの至難な作品を歌っているようです。

余談ですがCDボックスには分厚いブックレットが収められており、懇切丁寧な楽曲解説(フランス語と英語)、声楽作品の歌詞と英語対訳がついていて、さすがはドイツグラモフォン。そんじょそこらのやっつけ寄せ集めのコンピレーションとは訳が違います。新品であれば日本のアマゾンよりamazonUKのほうがたいぶ安いけれどそれでも2万円超。しかしそれだけの値打ちはありそうだ。
(この項続く)
by nekomatalistener | 2016-04-13 23:00 | CD・DVD試聴記 | Comments(0)
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