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法貴彩子ピアノ・リサイタル

♪ ロッテコアラのパンチ ♪




友人に勧められて法貴彩子(ほうき・さやこ)のリサイタルを聴きにいきました。


  2013年11月14日 於兵庫県立芸術文化センター(神戸女学院小ホール)
  チェスター・ビスカルディ: 欲望への挑発(1984)
  ネッド・ローレム: トッカータ(1948)
  ロジャー・セッションズ: ピアノソナタ第1番(1930)
  エリオット・カーター: ピアノについての二つの考察より「カテネール」(2006)
  ローウェル・リーバーマン: ガーゴイルOp.29(1989)
   (休憩)
  マルティン・マタロン: 時間の二つのフォルム(2000)
  ジャン・アラン: 3つのエチュード(1929-1930)
   Ⅰ.響きのエチュード
   Ⅱ.重音のエチュード
   Ⅲ.4つの音のテーマによるエチュード
  ジャック・カステレード: セロニアス・モンクを讃えて(1983)
   Ⅰ.肖像画
   Ⅱ.黙示的ロック
  
  
感想を一言でいうなら「すげーっ」(笑)。ありあまるテクニックと知的なアプローチで、ちょっと和製ユジャ・ワンの趣も。黒のノースリーブのブラウスに黒のパンツルック、終始にこりともせず勝気そうな中にちょっと不安げな表情が・・・素敵ですww。
プロフィールを見ると02年に京都市立音楽高校(現京都市立京都堀川高校)卒、同年9月パリ国立高等音楽院入学、11年までフランス在住だったとのこと。これまでの演奏歴にはラヴェル、ラフマニノフ、メシアン、バルトーク等々、近現代の難曲がずらりと並んでいます。
それにしても今回のプログラム、今現在の彼女のお気に入りばかり並べたのだろうか。ここまでワガママ通せるというのも凄いな。私はそんなにピアノヲタクではないので、「ガーゴイル」しか聴いたことがなかったのですが、いずれの作品もピアノ弾きには堪らないだろう。正直なところ、どうせならもっとハードコアな現代モノに惹かれる私としては、どれもこれも現代風の衣装をまとったサロン音楽もしくはアンコール・ピース集に聞こえてしまうのですが、それでも古典派やロマン派には目もくれず、おそらく今の彼女の年齢でしか弾けない作品だけを選び、不相応な「内面」だの「精神性」なんかも横に置いといて、ひたすら超絶技巧を知的に制御し切ることだけに特化した今回のリサイタルには、ある種すがすがしいものを感じました。
個々の楽曲について詳細を語る資格は私にはありませんが、こういったプログラムの中だと、やはりエリオット・カーターの才能が際立つように思います。近現代の作曲家のなかではそこそこのビッグネームだと思いますが、それなりの理由があってのことだと感じました。ピエール=ローラン・エマールの為に書かれただけあって、かなり激烈な作風ですが、ベースは気の利いたアンコール・ピースでしょう。ロジャー・セッションズはストラヴィンスキー自作自演の「結婚」のピアノパートを弾いていたので、ピアノの腕が立つことは判っていましたが、このソナタも相当の難曲だろうと思います。ただ、なかなかかっこいい曲だとは思いながらも、繰り返し何度も聴きたいか、と問われたらかなりビミョ~。リーバーマンの「ガーゴイル」はユジャ・ワンが取り上げたためか、ただ今プチブレイク中の作品だと思います。確かにテクニックのある人が弾くと思わず笑ってしまうくらい効果満点の作品。今回の演奏も私、笑ってしまいました。
プログラム最後のカステレード「セロニアス・モンクを讃えて」は実に面白い作品。それまで暗譜で弾いてきたのですが、これだけは楽譜を置き、譜めくりを従えての演奏でした。特に二曲目「黙示的ロック」は猛烈な超絶技巧という感じ。それがどれくらい猛烈かというと、リゲティのエチュード第2巻の終曲「無限柱」よりは少しマシなくらい、といえばお判り頂けるでしょうか。何となく曲想もリゲティに似ています。これを目の前で弾かれたら、もう口をポカンと空けて呆然とするしかない。アンコールは無し。そりゃもう当然でしょう。
さて、このピアニスト、今後どのように進化していくのだろうか。これから充実の30代、私の願望を交えた想像ですが、リゲティのエチュードとメシアンの「鳥のカタログ」あたりはいずれ全曲に取り組まれるのでしょう。シャリーノなんかも向いてそう。ただ、その先ブーレーズやクセナキスを取り上げる可能性は低いでしょうね。大井浩明とのデュオをされたりしているので可能性ゼロではありませんが。近代モノではラヴェルよりドビュッシーが向いているかも知れません。特に「12のエチュード」は彼女の知的なアプローチでいつか聴いてみたいものです。自身の成長に沿ってロマン派のレパートリーも増えていくのでしょうが、むしろ聴いてみたいのはハイドンなどの古典派。勝手な事を言ってますが(笑)、本当に楽しみなピアニストが現れたものです。紹介してくれた友人に感謝。
(この項終わり)
by nekomatalistener | 2013-11-15 12:59 | 演奏会レビュー | Comments(2)
Commented by lou-violin at 2013-11-15 18:21 x
アンコールは、さえこ編ラ・ヴァルスを予定されていたとか。が、モンクで身も腕も限界に達して弾けなかったのを残念がられているそうです。
Commented by nekomatalistener at 2013-11-15 22:44
別の機会にぜひ聴いてみたいですね。モンクを湛えて・・・まぁ楽そうには聞えませんでしたが、そこまで自分自身を追いこんで弾いてたのか、と驚きます。
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