普段会社では出来るだけヲタキャラは出さないようにしてるのだが、この前同僚が「週末に子供連れてライオンキング行くんですよ~」というのでつい、「あー、あれね、被り物造ったジュリー・テイモワって天才だよね、ストラヴィンスキーの「エディプス王」の演出も良かったし、「タイタス・アンドロニカス」って映画もなかなか面白いよ」とか、「ジャングル大帝のパクリとか言われたこともあるけど、どっちかっつーとヘンリー四世だと思わん?」とか口走って少し引かれる。
プロのオーケストラのコンサートって何ヶ月ぶりだろう?関西に居た時は、在阪オケの定期なんかに誘って下さる取引先関係の方などもいらっしゃったおかげで、行く機会もちょこちょこあったのですが、関東に赴任してからはオペラばかりになってしまいました。偶々目にとまったコンサートでしたが、ツィンマーマンの「ユビュ王」の実演を聴く機会があろうとは、とびっくり。期待通りの素晴らしさでした。 2013年7月6日 シャリーノ 夜の肖像 Autoritratto nella Notte ツィンマーマン ユビュ王の晩餐のための音楽 Musique pour les soupers du Roi Ubu (休憩) ブルックナー 交響曲第7番ホ長調 大野和士指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 於すみだトリフォニーホール ベルント・アロイス・ツィンマーマンの「ユビュ王の晩餐のための音楽」、名前のみ有名でめったに聴く機会のない作品ですが、最近はミヒャエル・ギーレンの指揮したものがyoutubeで聴けたりする。それはそれでいいんだが、最後にシュトックハウゼンの「ピアノ曲Ⅸ」とワーグナーの「ワルキューレの騎行」とベルリオーズの「断頭台への行進」の引用がぶつかり合い、爆発炸裂する終曲はなんとしても生で聴きたいと思っておりました。その夢が意外に早く叶って、もう言うことがありません。カッコよすぎる。これが快楽でなくて何だろう。大野和士もおそらくやりたくて堪らなかった曲目に違いありません。指揮しながら楽しくて仕方がないというのが、こちらにも伝わってきます。指揮者冥利に尽きるプログラムなんだろうと思いました。 それにしても1968年に初演された本作、古今の様々な音楽のコラージュといえば、誰しも(同じく1968年初演の)ルチアーノ・べリオの「シンフォニア」を連想するはずだが、どちらかがもう一方に影響を与えた、ということはあるのだろうか、それとも偶々似通った発想の作品が生まれたのか?はたまた、こういった手法は60年代のある時期、一種の流行だったのか。会場でもらった解説には何も触れられていない。また、引用されている楽曲についても網羅されていない(ちなみに海外のサイトなどを調べても大同小異)。 順序は前後しますが、最初に演奏されたシャリーノの「夜の肖像」、1982年作曲、日本初演とのこと。弦の特殊奏法を多用した最弱音や、管楽器の音を鳴らさずに息の音だけをさせる奏法など、静寂のなか張りつめた空気が漂う。この雰囲気は、1980年代のルイジ・ノーノの作品を思わせるものがありました。シャリーノは最近アムランがそのピアノ曲を紹介したり、盟友ポリーニが自分のプロデュースする演奏会で取り上げたりで有名になりましたが、その饒舌なピアノ曲とは随分おもむきの違う今回の作品、私は初めて聴きましたがとても面白いと思いました。音源があればじっくり繰り返して聴きたいと思います。 今回のコンサート、土曜日のマチネということもあってほぼ満席、大半のお目当てはブルックナーか。私には、苦手とか嫌いとかとは違うが、あまり積極的に聴きたいと思わない人の一人です。まぁ勉強だと思って若い頃に3~9番までの交響曲を一通り聴いて、それなりに良いところもあるのにどうも熱心に聴く気になれないままこの歳になってしまいました。7番を聴くのも随分ひさしぶり。そんな訳でえらそうな講釈を垂れる訳にはいきませんが、大野和士の指揮、特に終楽章は「やはりオペラの人の指揮だな」という感じがしました。テンポの(ちょっとあざとい)動かし方とかデュナーミクの付け方とか、およそ求道的でないブルックナー。あんまり構築性とか精神性みたいなものを感じさせない、むしろ享楽的といってもいいような演奏で、私はおかげで眠くもならず楽しく聴きましたが、根っからのブルックナー好きの方にはどう聞えたのでしょうか。それでも第2楽章はとても感動的な音楽だと思いましたが。 ブルックナー・・・やはりあんまり書くことがない(笑)。今回は短め。 (この項終り)
by nekomatalistener
| 2013-07-06 20:30
| 演奏会レビュー
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