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ワーグナー 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 カラヤン指揮(その3)

これワロタわ~。
YAHOO!知恵袋より
Q:曲名を教えてください! すごく迫力のあるテンポのはやい曲です!

 「ダン!ダン!|ダン!ダン! |ダッダダーッダダー|ッダダーッダダー|
 アーアア|アアアア|アアアアアア|アアアアーア|アン
 ディレレレディレレレディレレレ|ディレレレディレレレディレレレディレレレ|
 ダン!ドン!ダン!ドン!|ダン!ドン!ダン!ドン!|
 ダッダダーッダダー|ッダダーッダダー|
 アーアア|アアアア|アアアアアア|アアアアーア|アン
 ディレレレディレレレディレレレ|ディレレレディレレレディレレレディレレレ・・・」
 
 よろしくお願いします。
 m(__)m

A:ベルディのレクイエムから「怒りの日」だと思います。





ちょっと脱線から。「マイスタージンガー」第3幕でヴァルターが歌う夢解きの歌の出だし(譜例13)、どこかで聴いた憶えが・・・と思ったらブラームスのヴァイオリン・ソナタの第2番じゃないか(譜例14)。もしかしたら誰でも知ってるネタなのかも知れませんが、これは素直にワーグナーに対するオマージュと見るべきだと思います。でも、そうだとすると、ワーグナーが大嫌いでブラームスを擁護していたハンスリックの立場はどうなるのだろう?
(譜例13)
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(譜例14)
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前回の予告通り、今回は第2幕でザックスが歌う「ニワトコのモノローグ」を取り上げます。それにしても私が無粋な人間というのもあるが、この場面で何が判らないかといえば、それは宵闇に漂う「ニワトコのかおり」。正確にいえば「セイヨウニワトコ」なのでしょうが、調べるとどうも「マスカットのような香り」がするそうだ。また、ユダが首をくくった木であるとか、魔法・魔術に関する様々な伝承があるとのこと。こういったヨーロッパの共同体の共有知を持たないというのは、ちょっと日本人としては辛いところ。
まず譜例15、序奏の冒頭6小節だが、最初の2小節、第1幕のヴァルターの歌に現われ、wikipediaによれば「春の促しの動機」などと呼ばれている動機、それに続く32分音符の下降音形で暗示される靴屋の動機、それに続くホルンの2音ずつ4度下がって3度上がり、次に5度下がる非常に特徴的な音形の動機の、3つの要素が現われています。実際、それに続く長いモノローグは、その題材の殆どが(ザックスが回想する)ヴァルターの歌と、後ほど展開される「靴造りの歌」から成り立っており、経済的と言うか、ごく少ない素材から無尽蔵とも思えるような音楽を紡いでいくワーグナーの才能ここに極まれり、といった感じがします。
(譜例15)
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「トリスタン」以降のワーグナーの楽劇が、その長大さにも関わらず非常に輪郭が掴みやすく思われる秘密は、この動機(ライトモチーフ)による作曲技法にあるのは間違いありませんが、どんなに長大であっても結局ごくわずかの素材の「使い回し」で成り立っているようなものなのに、聴いていて少しも退屈しないというのは、これはもうワーグナーの天賦の才としか言いようがありません。
「春の促しの動機」は全曲の至るところに現われる、この楽劇のもっとも重要な動機ですが、これは早くも前奏曲に現われる「衝動の動機」(譜例16)から直接導かれたものであることは言うまでもありません。
(譜例16)
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ざっと、ここまでは耳で聴いて引用元がすぐ判るものですが、3つ目のホルンの動機は少し判りにくいように思います。どうも呼び名すら持たないようなこの特徴的な音形、引用元は第1幕のヴァルターの「資格試験の歌」の次の部分でした(譜例17の5小節以降)。この部分のヴァルターの歌の歌詞は春の森の情景を歌うものであり、ニワトコのモノローグにおける、初夏の宵闇のリンデやにわとこの木立に照応しているので、これを「森の動機」と呼んでも差し支えないでしょう(森をホルンで表現するのはドイツ音楽のお約束)。ちなみにこの「資格試験の歌」などと呼ばれるヴァルターの歌は、私が思うに「ヴァルキューレ」第1幕でジークムントの歌う”Winterstürme wichen dem Wonnemond,”(ジークムントの愛の歌)にも匹敵する素晴らしい旋律だと思います。
(譜例17)
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「ニワトコのモノローグ」におけるこの動機は、本当に美しい、ドイツの初夏の夜を彷彿とさせる音楽なのに、この場面以降、(私の見落としが無ければ)このままの形での展開はされていないようです。しかし、この4度下がって3度上がり、次に5度下がる音形は、前奏曲の次の箇所(譜例18の第3小節目)、あるいは「愛の動機」などと呼ばれる動機(譜例19の第3小節目以降)などとも密接な関係があるに違いありません。
(譜例18)
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(譜例19)
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更に言うなら、この「4度下がる」というのは「マイスタージンガー」全体を支えている基本原理となっていて、前奏曲の冒頭から様々な動機、コラールやら乱闘の音楽やらべックメッサーのセレナーデまで、ほとんどありとあらゆる素材に共通して見出されるものとなっています。こじつけ、考え過ぎという勿れ。この原理こそベートーヴェン以降のドイツ音楽(少し乱暴な括り方ですが)に顕著な動機労作thematische Arbeitの根幹をなすものであり、ワーグナーのライトモチーフやその構造も、それを拡大敷衍したものに他ならない、と思います。そして、ワーグナーがこの「4度下がる」という動機の萌芽から長大な全曲を生みだしたのは、おそらく意識的なものであっただろうという気がします。

全曲の中からわずかにザックスの歌う二つのモノローグ、そこに現われた幾つかの動機を取り上げただけで予習終了、という訳ではありませんが、まぁこれぐらいにしておきます。微細な動機やその萌芽がどこにどのように仕込まれているか、ヴォーカルスコアにして400頁にもなる全曲を隈なく探索するのは骨は折れるが実に楽しい作業でした。あとは4月の音楽祭での公演を待つばかり。
前々回に予告したアドルノの『ヴァーグナー試論』の読書レポートについては、稿をかえて取り上げます。
(この項終わり)
by nekomatalistener | 2013-03-20 21:37 | CD・DVD試聴記 | Comments(2)
Commented by schumania at 2013-03-22 22:46 x
アイーダは? 早う書いて〜な。
Commented by nekomatalistener at 2013-03-22 23:11
私は27日です。もう少しお待ちを。schumaniaさんは20日に行かれたのですよね?あまり先入観もちたくないので、今しばらく黙っててね(笑)。
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