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ストラヴィンスキー自作自演集WORKS OF STRAVINSKY (その11)

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CD11枚目はMiniature Masterpieces のタイトルが附けられています。私のような人間にとってはまさに宝石箱のような一枚。でもある種の人々にとってはせいぜいガラクタの一杯詰まったおもちゃ箱といったところでしょうか。二つのコンチェルト・グロッソを除けば殆どの作品が1~2分程度のミニチュアから出来ています。私もこれらの作品の短さにならって、今回はツイッター風に短くコメントしていきます。

  ①祝賀前奏曲(1955/1955初演) [1963.12.17録音]
  ②小管弦楽のための組曲第1番(1917~25/1926初演) [1963.3.29録音]
     1.アンダンテ 2.ナポリターナ 3.エスパニョーラ 4.バラライカ
  ③小管弦楽のための組曲第2番(1921/1922初演) [1963.3.30録音]
     1.マーチ 2.ワルツ 3.ポルカ 4.ギャロップ
  ④協奏曲変ホ調「ダンバートン・オークス」(1938/1938初演) [1964.3.29録音]
  ⑤ノルウェーの情緒-4つのエピソード(1942/1944初演) [1963.3.29録音]
     1.序曲 2.歌 3.婚礼の踊り 4.行列
  ⑥サーカス・ポルカ(1942/1944初演)〔サーカスの象のために〕 [1963.3.29録音]
  ⑦弦楽のための協奏曲ニ調「バーゼル協奏曲」(1946/1947初演) [1963.12.17録音]
  ⑧15人の奏者のための8つのミニチュア(1961~62/1962初演) [1962.4.29録音]
  ⑨管弦楽のための4つのエテュード(1929/1930初演) [1962.11.29-12.1録音]
     1.踊り 2.風変わりExcentrique 3.讃歌Cantique 4.マドリード
   
  ①④⑦コロンビアso  ②③⑤⑥⑧⑨CBCso

ピエール・モントゥーの80歳の誕生日のために書かれた「祝賀前奏曲(Greeting Prelude)」はあのHappy Birthday To You のメロディーに基く素敵な小品。凝った和声附けによってきらきらと光る鉱物の結晶のような響きがもたらされており、僅か1分に満たない作品にも関わらず作曲技法の粋を集めた、と言いたくなる出来栄えです。

次の二つの組曲はいずれも1914~1917年に書かれたピアノの為の「易しい小品」からの編曲。めっぽう楽しい作品ですが「子供っぽい」と言う勿れ、「マーチ」の不穏な響きなど、ストラヴィンスキーならではの和声感覚に満ち満ちています。アンコールピースとして委嘱されたのでしょうが、こういった作品で絶対に手を抜かないのが彼らしいところ。

「ダンバートン・オークス」は御存じバッハの「ブランデンブルグ協奏曲」第3番にインスパイアされたと思しい合奏協奏曲。このarid な知的構造物を面白いと思うかどうかが(3大バレエ以外の)ストラヴィンスキーを好きになるか嫌いになるかの分かれ目。因みにプーレーズが1980年代の始めに手兵アンサンブル・アンテルコンタンポランを振ったこの作品の演奏は乗りに乗った物凄いもの。ブーレーズの興味が那辺にあるのかが実によく判ります。そして私がストラヴィンスキーの音楽になぜこうも惹かれるのかも。それは敢えて挑発的に書くと、「音楽とは頭で聴くもの」というテーゼだろうと思います。

「ノルウェーの情緒」、海外サイトの情報によれば、ナチスのノルウェー侵攻を描いたハリウッド映画The Commandos Strike at Dawn の映画音楽として書いたものの、映画会社からの種々の要求に妥協出来ずにお流れになったとのこと。素材であるノルウェー民謡は、ストラヴィンスキーの妻が古書店で見つけた云々とあります。残念ながらこの作品は、絵葉書みたいというか、ノルウェー民謡による気の利いたコンサート・ピース以上でも以下でもない、という感じがします。

「サーカス・ポルカ」は楽しい小品。捻りまくったリズムと和声の中に、シューベルトの「軍隊行進曲」が出てくるのには大笑いします。それにしてもwikipediaに「バランシンの演出の下にマディソン・スクウェア・ガーデンで50頭の本物の象が踊った」とあるのは本当だろうか・・・?

「バーゼル協奏曲」は「ダンバートン・オークス」同様、一種のコンチェルト・グロッソというべき作品ですが、より骨ばった、素材がむき出しになったような作風。些か「手癖」で書いている感なきにしもあらずで、「ダンバートン」ほど好きになれません。第1楽章中程にマーラーの第5交響曲の有名な「アダージェット」の一節が聞こえるのは偶々なのか意図的なのか、スコアの前後の部分を詳細に調べてみないと何とも言えませんが、弦楽合奏ということで何らかの連想が働いたのかも知れません。

「8つのミニチュア」は1921年の「5本の指で」という子供用のピアノ曲の編曲。これが十二音技法にのめり込んでいた最晩年に書かれているというところに興味をそそられます。簡素で洗練の極みを行くオーケストレーション、単純な民謡風の旋律に附けられた選び抜かれた和声、それはラヴェルと同様、ストラヴィンスキーの驚異的な「耳の良さ」が生んだ傑作だと思います。敢えてこれに似ている作品を挙げるならば、ルチアーノ・べリオがキャシー・バーベリアンの為に1964年に書いた「フォーク・ソングズ」。この自作自演集の歌曲編に登場するキャシーが夫であるベリオに「ねぇダーリン、あなたもこんな作品を書いて」って言ったとしたら・・・(笑)いや、実にあり得る話です。大半が1分にも満たない小品ばかりですが、第7曲など美しすぎてなぜか淋しくなってしまう程。

「4つのエチュード」は1914年の「弦楽四重奏のための3つの小品」及び1917年の「ピアノラ(自動ピアノ)のための習作」の編曲。ブーレーズのお気に入りなのか、彼は何度もレコーディングしていますね。確かにディアトニックな書法にも関わらず、随分と急進的な感じがします。第3曲のCantique、作曲者指揮のCBC交響楽団の禍々しい響きも魅力的ですが、ブーレーズの振る透徹した響きで聴くと、不協和な響きの美しさに参ってしまいます。本当に作曲家も演奏家も耳が命だと今更ながら思った次第。
(この項続く)
by nekomatalistener | 2012-01-17 23:11 | CD・DVD試聴記 | Comments(0)
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